店頭で浮気する消費者

シブヤ「えっ、店頭での浮気ですか?」
主人公:シブヤ龍太郎

田端「そうなんです。うちの商品は店頭で他ブランドに浮気されてしまっているようでして……。」

電話の相手はジャパントイレタリー社の田端たばた、彼は調査部の所属であり、今回新たなテーマを抱えシブヤに連絡をしてきたようだ。

シブヤ「店頭でブランドスイッチされてしまうなんて、もったいないとしか言いようがありません。」

田端「全くその通りです。どれだけいい製品を作っても、最後の最後にひっくり返されてしまっては元も子もありませんよ。」

シブヤ「そうですよね……、では、具体的にはどういったことをお考えなんですか?」

田端「製品パッケージの調査は前にお願いした通りなんですが、実際の店頭でこのジャンルはどんな風に選ばれているのか、うちの製品はそもそも目に入っているのか、他社と並んだときにどんな風に捉えられているのか確認しておきたいと思いまして……。」

シブヤ「なるほど、そういう課題でしたか……。実はうちで開発中のショッパーインサイトを探る調査ツールがありまして、もしかすると、なにかお役に立てるかもしれません。」

田端「それは本当ですか!」

シブヤは考えながら、例のツールのことを思い浮かべていた。
ここで話は1ヶ月前に戻る。

最近うわさの"ショッパーインサイト"とは

シブヤは友人の難波と中華料理屋で昼飯を食べていた。

同期:難波隆
難波「シブヤ、うちのヨメの買い物を調べたいって……マジで?」難波は集計部所属のシブヤの同期である。新婚ホヤホヤであり、一方で恐妻家という噂も流れている。

シブヤ「マジマジ、普通に買い物してもらうだけだからさ。」
主人公:シブヤ龍太郎の楽しげな表情

難波「うちはそんないいモン食ってないぞ……。」

シブヤ「家計調査とか、そーゆー調査じゃないって(笑)。ちょっとした道具を付けてもらって、普通に買い物してもらうだけなんだ。一緒に梅田さんに同行してもらうけどね。」
※梅田……シブヤの先輩の女性社員、定性調査のモデレーターでもある。

難波「そうか、うちのヨメいいって言うかな……。でも、それで何が分かるんだい?」

シブヤ「買い物の現場で、消費者が何を見て、何を感じているのか、それを調べるんだ。」

難波「へー、それって最近聞くようになってきた"ショッパーインサイト"ってヤツだね。」

シブヤ「えっ、知ってんの?」

難波「こないだ業界紙に載ってたぞ。駒場さんもそんな話してたしな……。シブヤこそなに驚いているんだ?」
※駒場……シブヤの上司の男性。ナイスミドル。

シブヤ「そ・・・、そうだよな、ジョーシキ、ジョーシキ(汗)。」

同期:難波隆の困った表情
難波「でも、ヨメに例のアイトラッキングの装置とかをつけて街を歩かせるのは勘弁だぜ。ゴーグルを付けて街を歩けなんて言ったら殺されそうだ……。髪型がちょっと崩れただけでも機嫌悪いからな。頼む……まだ新婚だし、危機を招かないでくれ。」

シブヤ「アイトラッキングって、専用のゴーグルみたいな装置を使って、赤外線で目の動きを捉え、人の視線がどう動いたか、何に注目しているのかを調べる方法だよね。」

難波「えらく解説ッぽいセリフだな。誰に向かって言っているんだか……そうそう、それだと困るってか絶対無理そうなんだ。」

シブヤ「ふっふっふっ、その心配はないんだなー。」
主人公:シブヤ龍太郎の楽しげな表情

難波「どういうことだい?」

シブヤ「デジカメを首から提げてもらって、あとはICレコーダーを使うんだよ。」

難波「頭にはなにも付けなくていいってこと?」

シブヤ「そこがポイントだね。」

難波「良かった、これならヨメに話ができるよ。」

シブヤ「よろしく!」

ショッパーインサイト調査の実験

難波の説得は順調だったようで、次の週末、シブヤと梅田はショッパーインサイト調査のツールを持って、現場での実験のため難波の自宅のある東横線の某駅に降り立った。

シブヤ「初めておりたけど感じのいい街ですね。」

梅田「そうね、ところで難波君の奥さんってどんな人なのかな?」
先輩:梅田陽子の穏やかな表情

シブヤ「きれいな人なんですけど、アイツ、奥さんには頭上がらないらしいんですよ。」

梅田「ウワサ通りね(笑)、難波君もいじりやすいキャラだし。」

シブヤ「"も"ってなんですか?!」

そうこうしているうちに駅の改札に難波夫妻が到着した。

同期:難波隆の楽しげな表情
難波「梅田さん、シブヤ、お待たせ!」

奥さん「梅田さんはじめまして、いつも隆がお世話になっています。シブヤ君は元気してた?」

今日はショッパーインサイトに関する調査実験として、カメラとICレコーダーを身に付けて実際に買い物をしてもらい、どういったアウトプットが得られるのかテストを実施することになっている。

シブヤ「よし、カメラとICレコーダーのセット終了!いよいよ実験開始だ。」
主人公:シブヤ龍太郎

梅田「じゃあ、私と難波君の奥さんの二人で買い物に行ってくるから、二人は離れたところにいてもらえないかな。」

シブヤ・難波「えっ?」

梅田「だって4人でぞろぞろ買い物するなんて、BBQの買い出しでもないしおかしいじゃない。普段の買い物と全然ちがうでしょ。」

シブヤ「そういえばそうですね……。」

難波「じゃあ、僕たちはちょっと遠目の場所にいますね。」

そして、ショッパーインサイトの実験が始まり、駅から3分ほど歩いたところにあるドラッグストアに入っていった。

梅田「買うものは最初から決めてるんですか?」
先輩:梅田陽子の楽しげな表情

奥さん「そうですねー、大体は決めてます。今日は歯ブラシとマウスウォッシュを買う予定です。でも、他にも買っちゃうことありますね(笑)。」

梅田「じゃあ、普段通り買い物を進めていって下さい。気になることがあったら質問しますね。」

まずは予定通り歯ブラシのコーナーに進み、買い物は進んで行った。出口を出たところで、シブヤと難波も合流し、4人で喫茶店に入った。

難波「おつかれさま!」

シブヤ「どうでした?」

梅田「そうね、思ったより自然に買い物できたって感じね。」

奥さん「話しながらなんだけど、あまり違和感はないかな。」

シブヤ「思った通りですね。じゃあ、カメラの写真を見せてもらってもいいかな?」

今回、シブヤの一番の心配は実際に撮れた写真だった。
カメラはストラップで買い物をする人の首にかけてもらい、撮影は自動で行うやり方である。一定間隔で写真を撮り続ける機能のあるデジカメを使い、買い物の間は特になにもしなくても自動で写真を撮り続けるようになっている。

  • シブヤ「おっ、撮れてる撮れてる!これなら大丈夫だ。」
  • 難波「本当だ、しっかり製品のパッケージも写っているし。」
  • 梅田「値札も撮れてるし、売り場の感じもよく分かるね。」

ショッパーインサイトの写真:店内の様子

  • 奥さん「あっ、私の手が写ってる!歯ブラシ持ってるし(笑)。」
  • シブヤ「本当だ、これはリアリティがある!」
  • 梅田「歯ブラシを別のブランドに変えた瞬間が写っていたみたいね。」
  • 奥さん「珍しく安かったんですよー。」

ショッパーインサイトの写真:買い物中の様子

難波「こっちの歩いてるときの写真はぶれてるね。ブランドとか分からないし。」

シブヤ「苦手なところはあるみたいだね。」

梅田「でも8割以上はちゃんと撮れてるじゃない。」

そして、買い物の現場で聞けなかったことを写真を見ながらインタビューし、一通り聞き終わってからこの日の実験は終了した。帰りの電車に揺られながら、今回はいつになく手応えを感じているシブヤだった。

そして、2週間が経ち、冒頭のジャパントイレタリー社の田端から電話に戻る。

シブヤ「ええ、田端さん、弊社で開発中のショッパーインサイト調査用のツールがあります。でも、アイトラッキングほど大がかりではない方法なんです。」
主人公:シブヤ龍太郎

田端「それはこちらも望むところです。シブヤさん、よかったら詳しくお話をお伺いできませんか?」

シブヤ「資料だけお送りするのもなんですから、ぜひお伺いしてご説明させて下さい。」

田端「分かりました、ぜひお願いします。」

電話を切ったシブヤの横で、後輩の麻布が目を輝かせていた。

後輩:麻布さやかの楽しげな表情
麻布「シブヤさん、なんだか良いお話みたいですね。とうとう、あれを使うんですか?」

シブヤ「うん、そうなるかもしれない。田端さんの課題に向いているかもしれないんだ。いやー楽しみだな!へへっ!」

その頃上司の駒場は遠くの席で少しすねていた。

駒場「うーん、あれは俺が考えたんだけどな……。まあ、やる気満々みたいだし、今回はシブヤにまかせてみるか……。」
上司:駒場栄二郎の困った表情

シブヤ龍太郎のリサーチファイル、「ショッパーインサイト編」は今回1話で終了です。
このストーリーは架空のものですが、調査実験は実際に弊社で行っています。詳しい内容につきまして関心をお持ちであれば、ぜひ弊社までお問い合わせ下さい。

ショッパーインサイト調査で撮影した写真
ライフログカメラで撮影した写真

次回、シブヤ龍太郎のリサーチファイルは新テーマを扱う予定です。