少し前ですが、楽天やファーストリテイリングが社内の公用語を英語に統一するということが話題になりました。
私はお恥ずかしいことに全く英語がしゃべれないのですが、上記の会社のように社内全体を、とはいかなくても一定以上の職級の場合には英語が必須というところや、入社(転職)条件で英語のスキルを課すところも多く存在していますよね。
弊社はグループインタビューの会場をレンタル貸しもしていますが、同時通訳機を使用されるレンタルのクライアントも多く、国際化の波を感じています。

一方で、先日このような話題を目にしました。25回忌を迎えた御巣鷹山日航機墜落事故の交信内容について取り上げた記事です。航空機の無線も通常は英語での会話が基本だそうですが、そのときの管制官は操縦士の負担を考え、途中から日本語での会話に切り替えたとのことです。

「何とかしたい」。そう思うと、とっさの呼びかけが口をついた。「これから日本語で話していただいて結構ですから」。パイロットと管制官とのやり取りは、近くを飛ぶ航空機でも聞き取れるよう、通常は英語を使う。でも今は、パイロットの負担を少しでも減らし、事細かにやりとりしたかった。

2010年8月10日asahi.comより

日本語と同様に英語を扱えることがベストなのですが、完全にそうである人は少ないでしょう。
多くの場合、語学という壁によって、言いたいことのニュアンスまでは伝えられないことや、一度構えて考えなければいけないことも出てきます。
また、それを超えようと思うことは実際ストレスのかかる行為だったりもします。
(御巣鷹山の事故は25年前なので、公立小学校でも英語の授業が1年生から始まる今の環境では大分違うかもしれませんが。)

その一方で、スムーズに「共通語」を手に入れられた場合には、意志の疎通が一気に進みます。自分のことを分かってくれている、分かろうとしてくれている、という感情にもなるかもしれません。

実はこれ、グループインタビューをはじめとした、調査の場でもいえることなのではないかと思います。
コンセプトを作って、対象者に聞いてみた、でも反応が思わしくない。
もちろんコンセプト自体が受け入れられなかったという場合もありますが、コンセプトで説明されている内容が、メーカーまたはマーケター視点の言語になってしまっていて、言葉が通じない、理解できない、という場合も意外とあるのではないかと感じます。
本当は消費者の感情(右脳)に訴えたいのに、左脳で考えさせてしまっている場面、コンセプトを読んだ後、対象者に沈黙が流れる場面、……。

この状況の解決方法としては、まず、コンセプトで伝えたかったことは何なのかをきっちりと整理することだと思います。当たり前、ですよね。でも意外と抜けがちです。
誰向けのどんなメッセージなのか。
競合と比べた良さ、新しい価値の提案、既存商品への不満の解消、開発者の思いの伝達、……伝えたいことは色々あると思いますが、その中でも軸はどこなのか、そしてその根拠はどこにあるのか。
そして、その上で、消費者が理解できる(独りよがりでない)言語に落とし込めているのか。消費者が実感を持って受け入れられる言語を使っているのか。

対象者が身を乗り出すようなコンセプトには「感情を揺り動かされる何か」があると思います。対象者との共通言語を使って、メーカーの想いを対象者に伝え、感情を揺り動かす。そんなお手伝いができたときこそ、「リサーチャー冥利に尽きる」瞬間です。