「246万人」
……北海道旭川市、人口36万人市の『市営・旭山動物園』の2009年度の来場者数。

旭山動物園は、「日本最北の動物園で、アクセスが不便」また「いち市営」であるにもかかわらず、外国からの観光客をも魅きつけて、一躍有名になった。
従来の一般的な動物の姿形を見せることに主眼を置いた「生態展示」から、動物の自然な行動や生活の様子が見られる「行動展示」を導入し、“静”から“動”へ発想を展開させたのである。

水中トンネルから見る『ぺんぎん』のスピード感あふれる泳ぎ、《もぐもぐタイム(餌付けの時間)》で見た『ほっきょくぐま』のダイナミックなダイブ、『オランウータン』のエキサイティングな空中散歩、円柱水槽の中を自在に上下する『アザラシ』……など、動物たちが本来の能力を発揮して、楽しそうに動き回る姿を間近で観察することができた。
あまりの面白さに、「夜の動物園」を再び訪れた。何と、リピートしてしまったのである。
昼間のんびりしていた『カバ』が大きな口を開けている、『アムールトラ』や『ライオン』の息が荒々しい、『エゾフクロウ』が首をクルクル回している……など、日中は静かな夜行性の動物たちが暗くなってから活発になる。それに対して、日中元気だった『オラウータン』や『チンパンジー』はすっかり寝入っている。

朝から夜まで、飽きることがなかった。ショーや芸とは違う展示法やアイディアあふれる環境作りによって、「普段接することができない動物をもっと近くで、もっとじっくり見たい」という欲求が満たされた。
また、日常の彼らの生活を、観客の反応を確かめながら熱心に語る飼育係の《なるほどガイド》にも、聞き入ってしまった。
さらに、動物たちの“静”と“動”とを交互に見ることで、「もっと彼らのことを知りたい」「冬の姿も見てみたい」と、好奇心や探究心をかき立てられたのである。

入園者数が急激に増加した旭山動物園は、逆境を克服して、劇的な復活を果たしたベンチャー・マーケティングのお手本として語られることが多いが、それだけではなかった。
「もっと見たい」「もっと知りたい」という欲求に応えた施設作りは、潜在ニーズの掘り起しの成功事例であるし、“静”と“動”とを自然かつリアルに表現することは、人の気持ちを惹きつけることにつながる。
マーケティングに役立つヒントに溢れていて、見習うことが多いと感じた。