ギャル調査当日

シブヤ「いよいよだな。」
シブヤは会場の受付でふとつぶやいた。今日はジャパンドリンク社の依頼で実施している「ギャル調査」のグループインタビュー当日である。

主人公:シブヤ龍太郎の立ち姿

エレベーターのドアが開いて中から20才前後くらいの小柄な女性が降りてきた。ブラウンにカラーリングした髪、ピンクと白が基調のファッション、ミニスカート、そしてばっちり決めたアイメイクが特徴的である。

シブヤ「座談会にご出席ですか?」

対象者「そうです♪」

シブヤ「暑い中お越し頂きましてありがとうございました。それでは、こちらで受付をさせて頂きます。」

シブヤは女性を目の前にして顔がニヤけるのをグッと我慢しつつ、受付の担当に引きついだ。
そして、バックルームのドアが開いて今回モデレーターを担当する梅田が現れた。

梅田「シブヤ君、対象者来たの?」
先輩:梅田陽子の立ち姿

シブヤ「来ましたよ!へへ。」

梅田「なにニヤけてるのよ。」

シブヤ「そ、そんな顔してました?!」

梅田「やっぱり、ギャルがタイプなんじゃないの?」

シブヤ「いや、そんな!……でも近くで見るとかわいいもんですね。」

梅田「ほらー(笑)。」

シブヤがグループインタビュールームの裏手にあるバックルームに戻ってくると、大崎を始め、ジャパンドリンク社のメンバーが集まっていた。既にバックルームでは、来場した対象者の事で盛り上がっているようだ。

大崎「シブヤさん、あの対象者が持っているバッグは例のケータイで送ってもらったヤツですね。」

シブヤ「さすが大崎さん、鋭いですね!」

大崎「実際に持っているのを見ると、グッとイメージが沸きますね。」

後輩:麻布さやか
麻布「そうですよね、こんな風にコーディネートするんだ……とか、色々発見が多いですよね。」今回のメンバーの中では年齢が一番近いこともあって、麻布のファッションチェックは的確だ。

麻布「そういえば、ネイルもすごく凝っている子がいました。」

大崎「そうなんですか、よく見てますね-。」

事前に携帯電話で撮った持ち物や飲んだ飲料の写真があったため、おおよそのイメージはつかめていたが、実際のファッション、メイク、表情などを見るとさらに情報が増え、対象者の人となりがありありと見えてくる。

そうこうしているうちに対象者が全員そろい、梅田のモデレーションによりグループインタビューが始まった。2グループのうち、最初は年代が高い「高校卒業後~24才」のグループだ。

グループインタビュー開始

自己紹介も終わって対象者の雰囲気が和らぐと、梅田は本題に入った。

梅田「ところで、ギャルってどういう人なのかな?
先輩:梅田陽子の楽しげな表情

対象者A「えー、濃いアイメークのイメージかな。自分ではギャルだと思わないけど、友達からは『化粧が濃いよねー』って言われる。」

対象者B「ナチュラルじゃないって感じ、オーラがあるって言うか……。」

対象者C「あんまり先のこと考えてないとか、『なんか、いけるっしょ』みたいな。自分はギャルじゃないけど……。」

対象者D「えっ、ギャルでしょ。」

(一同笑う)

対象者同士のツッコミに、バックルームにもドッと笑いが広がった。

対象者D「昔は黒いとか『これがギャルだ』ってものがあったけど、今はその範囲が広がって、白い子もいるし、服装も色々だと思う。」

梅田「そうなんだー。」

梅田のモデレートで対象者が次々と話を繰り広げていく、少し前まで見知らぬ同士だったとは思えない雰囲気である。モデレーター梅田の本領発揮だ。
その一方、バックルームにいたシブヤはある疑問が頭をよぎっていた。

シブヤ「みんな、自分をギャルだと思っていないんですね……。」
主人公:シブヤ龍太郎の穏やかな表情

大崎「そう、僕もそこが気になっていたんですよ。」

シブヤ「ギャルと言われたい訳じゃない、でもギャルのファッションを取り入れている……この心理は不思議ですね……。」

ギャルファッションなのに、ギャルと言われたくない矛盾

一方、グループインタビュールームでは、対象者の会話が続いている。

対象者B「『ギャルだよね』って言われると、化粧が濃いと言われているように思う。」

対象者D「あと、チャラそうとか……。」

梅田「そうなんだ……。じゃあみなさんは、周りからどういう人だと思われたいのかな?」

対象者A「あんまりまじめな人間に見られたくない。この人まじめそうだし、とっつきにくそうだと思われたくないかな。」

対象者B「やっぱ化粧とかちゃんとやってるなと思われたい。」

対象者C「周りに若い子が多いし、大人に見られたい、なめられたくないというか……。」

バックルームにて、シブヤは対象者の発言に戸惑っていた。

シブヤ「まじめに見られたくなくて、でもチャラくも見られたくない、その微妙さってなんだ……。」

麻布「なんだか少しだけ分かる気がします。」

シブヤ「えっ、それってどんな感じなのかな。」

後輩:麻布さやか
麻布「女の子って『今だからできること』って発想があって、その時期にまじめなだけで終わっちゃうのって寂しいというか、女の子らしくオシャレしていたいって気持ちがあるんです。女の子としてちゃんとしていたいというか・・・。でも、それはオシャレしたいだけであって軽い人に見られたい訳じゃないんですよね。」

シブヤ「そうなんだ……。」

麻生「まじめちゃんで終わるのは嫌で、オシャレにはしたいけれど、『ギャル』ファッションでやりすぎると軽く見えちゃうかもしれない……でも、雑誌とか友達のファッションは気になる。そんな心理なのかもしれません。」

シブヤ「なるほど……。だから人からはギャルだと突っ込まれてしまうのか……。しかし、ギャルってそんなに嫌われているのかな?本当に嫌だったら『ギャル』っぽいファッションしないよね。」

麻布「そこは私も引っかかっていたんです。」

シブヤ「嫌いじゃないけど、もろに『ギャル』とは言われたくない……、微妙だ。もしかすると、次の高校生グループに何かヒントがあるかもしれないね。」

携帯で撮った写真について

一方、グループインタビュールームでは次の話題に進んでいた。

梅田「じゃあ、今度は携帯で撮ってもらった写真について聞かせて下さい。」
先輩:梅田陽子の穏やかな表情

携帯で撮った写真:セシルマクビーのバッグ
対象者A「このセシルのバッグは、結構大きくて、お母さんが私がセシル好きなのを知っていて『お誕生日おめでとう』って持ってきた。お母さん結構わかってる感じ。持ってくるもの持ってくるものわかってる。」※セシルマクビー(CECIL McBEE)というファッションブランド。

梅田「お母さんが分かってくれているんだ。」

梅田「こちらのPCはCさんの写真かな?色がピンクでかわいくて、テンションが上がる……って書いて頂いたんですよね。」

携帯で撮った写真:ノートパソコン
対象者C「そうです!パソコンは親に買ってもらって、ピンクでかわいくてレポートも書けるかな……と。学校にはUSBを持っていくからパソコン自体は持っていかなくて、人に見せることはないけどピンクは気分が上がっていいんです。」

飲料について

梅田「では、飲料について聞かせて下さい。」

飲料の写真:リプトン
対象者D「一番上のリプトンは毎日飲んでる。近くのコンビニでご飯と飲み物を買うときに毎日買ってる。ピンクグレープフルーツ的なニュアンスのものだけれど、ゼロカロリーってまずいものが多いけどこれは美味しい。」

飲料の写真:デカビタ
対象者B「炭酸が好きなのでこれ。のどが乾いたときに飲んだ気がする。水とかも味がないと飲んだ気がしない。香水も『つけてる!』とか飲みものも『飲んでる!』とかじゃないと。デカビタは通勤の途中なのでよく買う。」

バックルームではシブヤたちが盛り上がっていた。

シブヤ「デカビタだ!これは男が飲むものじゃなかったのか。そんなに"飲んだ気"がしたいんだ!」
主人公:シブヤ龍太郎の気づいた表情

麻布「この子炭酸好きですね、他にもコーラ飲んでますよ。」

シブヤ「本当だ……それに、水あまり飲まないのか。ジェネレーションギャップだ……。水いいのにな……。」

その後一通りの質問を終え、このグループは終了した。次に行った高校生グループではまた違った展開が見られた後、グループインタビューが終了した。帰り際、ジャパンドリンク社の大崎はシブヤに声をかけた。

大崎「シブヤさん、実際に話を聞いてみると、やはり違いますね。高校生ではもっとオシャレして『ギャル』に近づきたいと思っていましたし、『ギャル』とは憧れの存在なのか、チャラい存在なのか……。」

シブヤ「本当ですよね。」

大崎「それにドリンクもそうくるとは思いませんでした。デカビタとは!……とにかく今日は色々発見があって良かったです。それでは、レポートをお待ちしています。」

シブヤ「分かりました、本当に発見が多かったですね。レポートができましたらまたご連絡します。今日は本当にありがとうございました。」

報告

およそ2週間後、ブレスト等を経てレポートが完成し、ジャパンドリンク社へのプレゼンの日となった。関係者が集まり、大崎の言葉の後報告会が始まった。

シブヤ「早速ですが、今回の調査報告に移らせて頂きたいと思います。」同席している駒場、梅田、麻布には、シブヤがいつもより頼もしく見えた。
主人公:シブヤ龍太郎の穏やかな表情

シブヤ「まず一番の大きなファインディングだったのが、自分自身のことを『ギャル』だとはあまり考えておらず、読者モデルなどの本物だと思う『ギャル』を意識しつつ、その要素を取り入れている……という認識です。」

シブヤ「しかし、まじめだとは見られたくなく、周りからギャルだと言われたり、自分でも雑誌はチェックしていますので分かってはいるはずです。一方、読者モデルには届かない、あるいはチャラく見られたくないといったジレンマもあり、『ギャル』ではないという意識になっています。」

会議室にいるメンバーは食い入るように話を聞いている。
シブヤはしばらく説明を続け、途中からモデレーターの梅田にバトンタッチした。

梅田「……そういった意識の裏には『今のうちに遊んでおきたい』『今しかできないことをしたい』といった意識があります。その気持ちがナチュラルメイク、落ち着いたファッションを許さないこともあって、雑誌などで見る『ギャル』の要素を取り入れているようです。」
先輩:梅田陽子

その後、母親との関係の良さ、健康意識、持ち物やドリンクの話にも触れ、報告は終了した。

大崎「シブヤさん、非常に参考になりました。この層については私達にも分かっていないことが多かったようです。いやー勉強になった。」

シブヤ「そういって頂けると嬉しいです。僕も本当に勉強になりました。」

大崎「早速、この情報を元に製品コンセプトを作成しますので、また分からないことがでてきたら意見を聞かせて下さい。」

シブヤ「わかりました、何かあればすぐにご連絡下さい。」

ジャパンドリンク社を出て角を曲がると、駒場がシブヤに話しかけた。

駒場「中々いいプレゼンだったぞ。それに大崎さんにああいってもらえて良かったじゃないか。」
上司:駒場栄二郎の楽しげな表情

シブヤ「ありがとうございます。あんな風に言ってもらえると嬉しいですよね……。でも、ホッとしたな-。」

帰り道に色々話をしながら、仕事を終えた充実感に浸るシブヤ龍太郎だった。

シブヤ龍太郎のリサーチファイル、「ギャル調査編」はこれで終了です。
このストーリーは架空のものですが、調査自体は実際に弊社が自主調査として行ったグループインタビューを元に記事を作成しています。詳しい内容につきまして関心をお持ちであれば、ぜひ弊社までお問い合わせ下さい。

次回、シブヤ龍太郎のリサーチファイルは新テーマに突入の予定です。
お盆で多少間が空きますが、どうか次回をご期待下さい!