始めに

JMAでは通常のリサーチ業務の他に、リサーチをベースにした「コンセプト開発」のプロジェクトも(随時)行なっている。これは当社の創業者である小嶋庸靖氏が得意としていた新商品開発の幾多のプロジェクトの中で培われてきた云わばJMAのDNAを象徴する業務である。

コンセプト開発というテーマは、機能、価値、感覚などの要素を含むため、アイデア発想というクリエイティブな側面を要求される。客観データを重視する我々リサーチャーとは正反対の資質と考えられがちだが、実はリサーチャーは本来豊富な生活者情報を有するマーケターであり、アイデア発想の方法論さえを持てばコンセプト開発業務に非常に適した集団であると考えられる。

今回は当社で行っているこの「コンセプト開発」という業務を、ケーススタディを盛り込みながらご紹介したい。

コンセプト開発業務のフロー

商品のコンセプト作りは、市場のSTP分析に始まり、ターゲット市場の設定、切り口の発見、そして有望コンセプトのアレンジ、リファイン、そして最終コンセプトに仕上げる工程⇒アイデア発想のフローである。
JMAではこれを次のようなステップで業務工程としてパッケージ化している。

  1. 定義領域の市場データと消費者情報の収集(デスクリサーチ&定性調査)
    オープンデータチェックとアイデア発想に繋がる定性情報の収集
  2. 収集したデータ整理と消費者情報の加工(デスクワーク)
    市場のSTP分析、既存商品のベネフィット、及び未充足ニーズの整理
  3. 有望市場の探索とターゲット市場の設定(ブレーン・ストーミング)
    ターゲット市場(新市場)のKeyニーズと切り口・アイデア収集
  4. コンセプト・メイキング(ワークショップ)
    アイデアコンセプトを具体化し組み立てる(5~6案)の作成
  5. 受容性検討のためのコンセプト・スタディ(グルーピインタビュー:イメージビジュアル呈示)
    コンセプトのスクリーニング(絞込み)とブラッシュアップ
  6. 最終商品コンセプト提案

当社では情報収集の段階で、市場の定量データ/センサスデータとともに該当テーマについての生活情報を得る手段としてグループインタビュー、デプスインタビュー、あるいはエスノグラフィなどの定性調査を活用している。このような定性情報の収集は定量データを補強するとともに、断片的な情報の有機化・構造化などに効果的で、アイデア発想の起点となる。

情報の構造化と展開

以下は、実際に実施したコンセプト開発の際の情報の構造化の実例である。

この時のテーマはオフィス(食品)の需要開拓。市場の成熟化、商品の同質化が進行し、差別化が難しい食品業界にとってオフィス市場は新商品を創造できる数少ないマーケットの一つである。
当ケースでは、まずオフィスワーカー対象にグループインタビューを実施し、オフィスでの時間ごとの食品、飲料の摂取状況と具体的な商品、及び摂取理由を聞いた。
またそれぞれの時間で満たされていない生活者インサイトを顕在化させた。

以下はこの調査で導かれたオフィスでの「汁物、スープ使用」に対する基本ニーズを抜粋したもの。

  1. カラダが温まり、カラダが覚醒する
  2. 小腹を満たせる
  3. 短時間で食べられる
  4. ホッとする、気分転換になる
  5. 栄養が摂れそう
  6. 元気になる、リカバリー
  7. ▲カップは邪魔、収納に困る……など。

この基本ニーズに対応するキーワードを抽出、更に機能・感覚・価値などにブレークし切り口展開していく……

~例えば、「1.カラダが温まり、カラダが覚醒する」という基本ニーズから導かれるキーワードは、
保温、活性、代謝,エネルギー、スタミナ、燃焼、再生、循環、刺激……
また「2.小腹が満たせる」からは、
食事代わり、ボリューム、具沢山、とろみ、味の濃さ、リッチ、穀物系……

ブレーンストーミングで整理。

情報の構造化と展開例
基本ニーズ⇒キーワードに分解 キーワード 展開例
1.カラダが温まり、カラダが覚醒する 保温、活性、代謝、エネルギー、スタミナ、燃焼、再生、循環、刺激 機能で差別化……
2.小腹を満たせる 食事代わり、ボリュ-ム、具沢山、とろみ、味の濃さ、リッチ、穀物系 食感、素材で差別化……
3.短時間で食べられる RTD、そのまま食べられる、吸収性がよい立ったまま食べられる⇒スタイリッシュ 形態で差別化……
…… …… ……

このケースでは、オフィスでの汁物・スープは、時間的・環境的制約の中ボリューミーで、栄養機能があり且つスマートに食べられる形態がコンセプト構築のベースになる。

~.情報の構造化の手順(例)は次のようにまとめられる。

「市場の不満」⇒「基本ニーズ」⇒「キーワード抽出」⇒「要素の分解(ブレークダウン)」⇒「大切り口抽出」⇒「期待されるフィーチャー/形態」⇒「コンセプトアイデア収集」⇒「アイデアの具体化」

いくつも方法論はあると思うが、比較的効率よくコンセプト開発業務ができるフローである。

先見性のある生態をつかむ

「コンセプト開発」の業務は、リサーチャーやマーケターの方にぜひ経験して欲しい業務でありステップである。

生活者ニーズの発見といえば聞こえは良いが、生活者自身は自分のニーズを明確に意識している訳ではなく正確に表現もできない。したがって、リサーチャーやマーケターが丹念に生活者実態を観察してその意味を解釈したり、生活者の行動やインサイトを研究することによって先見性のある切り口が導き出せる。
そこにリサーチャー、マーケターの存在価値があるといえる。

次の機会には、具体的なコンセプトの組みたてと、コンセプト・スタディについて話をしたい。

続く