今回の「シブヤ龍太郎のリサーチファイル」では、「ギャル」のグループインタビュー実施前に、携帯電話を使った日記調査を実施していました。
そもそも、実際に対象者に会って話を聞くことができるグループインタビューにおいて、なぜさらに日記調査を行うのでしょうか?

グループインタビューの弱点

調査の現場で更に突っ込んだ質問もできれば、対象者の人となり、仕草などから推測も可能なグループインタビューに弱点などないようにも思えます。しかし、決してそうではありません。

  1. まず、最大の制約は「時間」です。
    一般的なグループインタビューでは2時間の時間が設定され、6名程度の対象者から意見を聞きます。単純計算すると、対象者1人あたり20分位しか発言時間がないことが分かります。
    さらにモデレーターが説明したり、質問する時間、最初に行う自己紹介などの分を差し引くと、もっと1人あたりの発言時間が短くなります。
  2. そして、聴取自体を口頭で行うことが弱点になることがあります。
    実際のものや写真を見ればすぐに分かることでも、耳で聞くとピンと来ないような事もあります。
    「ピンクでキラキラしているシュシュで、すごくかわいいんです。」と対象者が言ったとしても、どういったものか想像できるでしょうか?
  3. 対象者が具体的なことを忘れてしまうこともあります。
    目の前でブランド名や価格などを確認できれば正確な回答は可能ですが、見ないで答えることはそれより難しくなります。特に、普段あまり関心を持っていないものの回答は困難です。自宅にある家電のメーカー名が分からないといったケースもあります。
  4. 意識と実態にギャップがあることもあります。
    自分は毎日キチンとした生活をし、栄養にも気をつけているつもりでも、実際に食事を記録したところ、ジャンクフードが多かったり、栄養が偏っているといったギャップは意外と多いようで、そういったケースはよく見られます。
    それに、日常に溶け込み、ルーチン化したことは意識されにくくなるため、実際には行動しているのに、無意識のままとなっていることもあります。
  5. グループダイナミクスのマイナスの影響もあります。
    通常、他の参加者の発言に影響されて、対象者が自分では気がついていなかった事に気づく事ができるなど、グループダイナミクスはグループインダビューの醍醐味と言えます。
    しかし、逆に人の影響を受ける必要がないこともあります。1日の送信メールの通数を聞く場合でも、先に「1日1、2通ですかね…」と言う発言があると、みんなそんなものかと思い、少し少な目に申告してしまうようなこともあります。

弱点を補強する事前調査/日記調査

これらのグループインタビューの弱点と言える部分を補強するのが、参加の前にあらかじめ記入してもらう事前調査/日記調査といったものになります。

事前調査・日記調査の使用で先ほどの弱点を以下のように補えます。

  1. 時間
    対象者にとって都合の良いタイミングで、好きなだけ時間をかけられます。
  2. 記述
    口頭ではありませんので、写真をとるなり、サイズを測るなり、具体的に記録することができます。
  3. 記憶
    見たその場で記録、記載することができるので、忘却によって曖昧になりません。
  4. 意識とのギャップ
    「食日記」など実態を正確に記録する方法を用いれば、意識と行動のギャップがあっても記録可能となり、ギャップをあぶり出せます。
  5. グループダイナミクスの影響
    自宅などで記録できるので、他の参加者の発言の影響は受けません。

そして、何より事前に目を通すことができれば、あらかじめ対象者の価値観や行動、背景情報などをある程度把握しておけるため、どういったことを聞けばいいのかイメージでき、当日のグループインタビューでより深い聴取も可能となります。

事前調査・日記調査のデメリット

ここまで、事前調査・日記調査は「グループインタビューの弱点を補強できる」といったメリットについて述べてきましたが、一方でデメリットも有しています。

それは、事前調査・日記調査を実施する時間が必要になることです。リクルート終了から、グループインタビューの開催日までに更に期間が必要になります。ここが最大のデメリットなのかもしれません。

そして、2点目として、方法によっては調査参加へのハードルを高めてしまうことです。

「1週間に食べたもの、飲んだものなど、口にしたものは全て写真に撮り、製品名、価格などを正確に記録する。食事も間食も全て完全に記録する。」
……こういった日記調査を実施するとしたら、その手間暇を聞いただけで調査を拒否してしまう対象者も出てくるかもしれません。実際に飲食について記録するだけで痩せる「レコーディングダイエット」が存在するくらいですから、その負担感は軽くないと言えます。

3点目として、デジカメを使用する場合、ITリテラシーや、IT環境の影響を受けてしまう点が挙げられます。「デジカメで写真を撮ってメールに添付して送る。」これだけのことが、人によっては非常に困難な作業となることもあります。苦手な方や、デジカメをお持ちでない方もいらっしゃるでしょう。

そういったデメリットについても留意しつつ、妥当な線、現実的な線を検討してください。

写真を用いるケース

今回のシブヤ龍太郎のように、事前に写真撮影をしてもらうケースもまま見られます。
好きなもののデザインテイストなどは視覚的に捉える方が正確ですし、周囲の状況、シーンといった言語で説明がしにくいものの場合も同様でしよう。

なお、写真を撮影してもらう場合、どういった写真が必要なのか事前に分かりやすく説明しておかないと、意図とは異なる写真が送られてきてしまうこともあります。

以前、ある調査で、PCの壁紙がどうなっているのか知りたかったことがあり、「"PCのデスクトップ画面"の写真を撮って下さい。」とお願いしたときに、「PCをおいてある机の上の写真」が送られてきたことがありました。(……確かにそれもデスクトップではありますが。)

そういった注意点はありますが、写真から得られる情報量は多く、調査テーマによっては非常に有効な材料となり、グループインタビューを補強してくれる力強い味方になります。

あくまで、調査課題次第、ケースバイケースですので、無理に乱用する必要はありませんが、このような事前調査/日記調査を一度検討してみる価値はあると言えます。