今回の「シブヤ龍太郎のリサーチファイル」では、「ギャル」というターゲットを決めて、その条件をどうやって決めるかがテーマになっていました。
しかし、そもそもマーケティング活動においてターゲット層はどうやって決めるのでしょうか?

既存製品、ブランドの場合

まず、既存製品、既存ブランドであれば、新製品を作るとしても現在の顧客をターゲットから外すわけにはいきません。現状を大きく見直すのでない限り、今いるお客様というのが当然ターゲットになってきます。例えるなら、ど真ん中を狙うとも言えます。

ここまでは当たり前ですが、それでは色気がありません。そこで、もう少し顧客層を拡大できるよう、競合ブランドからも少し自ブランドに流入してもらうため、他社ユーザーもターゲットに含めるケースが多くなってきます。言わば、左右を狙ってみる作戦です。

そして、さらに今の製品より安い/高い価格帯のものや、少し簡便なもの/少し本格的なものを使っているユーザーをターゲットに含めることも可能かもしれません。上下を狙ってみる作戦です。

このようなターゲットの決定が通常のマーケティング活動での発想ですが、今回のシブヤ龍太郎のリサーチファイルのように、全く新しい製品や、市場を考える場合、ターゲティングはそう簡単ではなくなります。

新規製品、市場の場合

今回の例では、架空の飲料メーカー:ジャパンドリンク社の顧客があまり多くない若い女性層がターゲットに設定されました。そしてその中から情報発信力が高く、元気な層としてギャルが選定されています。(今回は架空の設定ですので、実際のターゲット選定はもう少し精査されるものと思います。)

自社が得意でない顧客を取り込む戦略もありますし、自社の得意な顧客から少し広げてみる戦略もあります。また、実際には成長が期待される市場であったり、ボリュームが多い市場を狙ってみるケースが多いように感じます。
このあたりは色々なケースがあるので一概には言えませんが、まずは何らかの形で自社の強みがいかせるターゲットを狙うのが順当でしょう。

逆に、今までのしがらみを捨てて、まるっきり新しいターゲット層を狙うのであれば、別ブランドを作ってイメージを一新してしまうといった大胆な方法を取るケースもあります。

対象者条件

ターゲティングが決まれば、調査における対象者条件も固まってきます。
性別、年代、未既婚、子供の有無、○○ユーザー、△△の利用頻度が高い人、××と考えている人といった、調査対象とする人の条件です。

この対象条件の決定は一見簡単な作業にも思えますが、マーケティングリサーチにおいて、「誰の意見を聞くか?」ということは非常に大きな意味を持ち、ここを間違えるとマーケティング戦略を読み間違えてしまいます。

対象条件はどうすべきか

いままでにない革新的な製品を出す場合、既存の保守的なユーザーに聞くと全く受容されないのに、初心者やこれまで難しすぎて使えなかった層には大歓迎といったケースもあります。
今では当たり前のカーナビも、運転や道に自信を持つドライバーからは全く見向きもされませんでした。
また、対象条件は、おおまかな条件で一回調査を行って、その中からターゲット層を明確にし、ボリュームを把握しつつ対象条件を精緻にしてから次の調査を実施する、二段階型の方法もあります。

カーナビの例で言えば、ドライバーという括りで一回調査をしてしまい、そこからカーナビのターゲット層になりそうな人に次の調査を実施する方法です。こうすると、カーナビのターゲットになりそうな運転や道に自身がない人がどのくらいいるのか(ボリューム)、さらに、その人はどういった人なのか(年齢、性別、運転歴、運転頻度、どういった意識なのかなど)が分かり、条件が把握できます。

もちろん、こういった理想的なステップが踏めず、一回きりの調査しかなく、対象条件を今までの知見だけで決めなければならない時もあります。その場合も、できるだけ既に発表されているデータや、自社で持っている過去データなどを参考に、現実的な対象条件設定を行ってみてください。また、色々なデータを見ているうちに、懲りすぎた対象条件になってしまった場合、「本当にそういう人がいそうなのか?」「あり得ない条件になってしまっていないか?」そういった観点で再度見直してみることも大切です。

かつて、各年代均等に人数が設定され、20代のエグゼクティブ(経営者)を何十名集めてくれといった企画書が海外から送られてきたことがありました。きっと、年代と役職のかけ算で算出したものと思いますが、その当時(そしてきっと今でも)20代の経営者はそうそういませんでしたので、現実的とは言い難い条件でした。

うるさいことを書いてしまいましたが、「現実的にそういった人がいそうである」とイメージできないと、調査が難航するばかりではなく、製品開発をはじめマーケティング全てが“絵に描いた餅”になってしまいます。

「これはどういった人向けの製品・サービスなのか?」そのことがマーケティングの起点であり、また迷いが生じたときに帰るべき場所となります。
ターゲット、そして対象条件は、シンプルなようで実に奥が深いものであると感じています。